平成21年度〜23年度 科学研究費補助金(若手B)研究テーマ
課題番号:21700834 (申請者:北越大輔)
「成績と授業評価データからなる満足度・習熟度関係性モデルを用いた学生への指導法提示」に関するページ
提案システムにおける授業評価・習熟度関連性モデルとして,本研究ではベイジアンネット(Bayesian network:BN)を用いる.
BNは確率変数をノードで表し,ノード間の確率的依存関係を非循環性の有向グラフで表現した確率モデルである.Fig. 1にBNの一例を示す.確率的依存関係が強いノード間には有向リンクが引かれ,有向リンクが指す先にあるノードは子ノード,リンク元に存在するノードは親ノードと呼ばれる.BN内の全ての確率変数の同時確率分布は,各ノードに割り当てられる周辺確率,および同時確率の積の形で表現される.
BNは,各ノード間の依存関係が視覚的に表現されるため,データマイニング,知識発見のツールとして良く用いられている.また,ネットワークの結合構造とCPTを利用することで,あるノード(確率変数)が特定の値を取る確率を計算(確率推論)することが可能である.
授業評価・習熟度関連性モデルを構築するため,学生の成績・授業評価データを収集する.データの収集のため,東京工業高等専門学校情報工学科の2 年生から5年生を対象に,2009年度前期中間・期末,および後期中間試験終了後に,筆記式のアンケートを実施した.
アンケートは今後も継続して実施予定である(2010年4月時点で,2009年度学年末試験のアンケートデータまでは収集済み).2010年度以降については実施範囲の拡大,および各試験間での関連性を調べるため,記名式への移行も視野に入れている.また,アンケート配布,収集の簡素化を目指し,オンラインでのアンケート実施も検討している(2010年4月現在,Webアンケートの利用可能性について検討中).
アンケートで得られた多変量データをもとに,本研究ではBN構造学習支援ソフトウェアのBayoNet(外部リンク)を用いて構造学習を行う. 全教科の関係性を一括して学習することは計算量的に困難であるため,本研究では,教科に関するノード集合ごとに小ネットワークの結合構造を学習し,小ネットワーク間の結合構造を逐次的に決定していく段階的構造学習法にもとづいた学習法を適用し,各学年の教科ごとの関連性を表すネットワークを構築する.
収集デ−タから構造学習した授業評価・習熟度関連性モデルの一部を以下に示す.このモデルは東京高専情報工学科3年の各教科の関連性を表したものである.例えばネットワークにおける得点_解析学1ノードと得点_知識工学1ノードの間は矢印で結ばれているが,これは解析学1の試験の得点と,知識工学1の試験の得点に確率的依存関係があることを示している.
授業評価・習熟度関連性モデルとしてBNを適用することによって,授業評価・習熟度の関連性が視覚的に表現され,教員が気付かなかった,教科間および教科に関する評価間等における“意外な”関係を発見可能となることが期待できる.また,ネットワークの結合構造を用いた確率推論を用いることで,既知の要素から未知の要素を推論できる.
モデルの結合構造が授業評価・習熟度の関連性を適切に表現できているか考察を行った結果,教員らにとって既知であると考えられる因果関係がネットワークの結合構造として表現されているのと同時に,一見すると意外なノード間の関連性も発見された.これらネットワークの結合構造が妥当であるかどうかを,モデルの結合構造を用いた確率推論の精度を計測することによって評価した.
10-fold交差検証法によってモデルの推論精度を求めた結果,ネットワークに与えるノードの確定値の数にも依存するが,平均して7割前後の精度を得られることが確認できた.また,ノードの確定値の数を増加させることで推論精度が向上することも確認した.一般的に,多くのノードと依存関係がある(ノード間の矢印が多い)ノードでは推論が容易であり,矢印の数が少なくても,それらの依存関係が強い場合には同様の傾向が得られた.その反面,依存関係のあるノード数の少ないノードに関する推論精度は低くなる傾向が見受けられた.