平成21年度〜23年度 科学研究費補助金(若手B)研究テーマ
課題番号:21700834 (申請者:北越大輔)
「成績と授業評価データからなる満足度・習熟度関係性モデルを用いた学生への指導法提示」に関するページ
本研究では,教育機関が蓄積する学生の授業評価アンケートデータとアンケートに対応する科目の成績データから,学生の授業満足度・習熟度関連性モデルを構築し,このモデルを用いた学生に対する適切な指導法提示支援を目的とする.提案モデルは多変量データ間の関係性を視覚的に表現可能なベイジアンネット(Bayesian network:BN)の混合モデルとして構成される.授業評価・成績データとして学生集団の時系列データを蓄積することで,類似した傾向を有する学生に対する予測や,生じた問題に関する時間を遡っての分析が可能となるため,① 問題となり得る事象に対する予防的な指導,および,② 学習に関する問題を既に有している学生に対する解決策提示にも活用できる.
高等教育機関に在籍する教員の研究や教育に関する資質・能力の向上を図り,ひいては学生への教育効果を高めるFaculty Development(FD)と呼ばれる取り組みが欧米を中心に活発化している.日本においても1990年台から,FDという用語が用いられるようになった.FD活動としては,講演会や教員相互の授業参観,授業評価アンケート等があり,学生の授業評価や成績に関して大規模な調査を行う機関も増えつつある.これらの活動には少なからぬ負担が伴う一方,その結果が学生への学習支援や成績向上にどの程度役立っているのか,多様な学生の満足度や勉学意欲向上にどれ程貢献しているのか,十分な評価が行われているとは言い難い.また,授業評価データを統計的手法等に基づき解析した研究例も報告されているが,調査結果を教育環境へフィードバックしようとする取り組みについては不十分であり,データから得られる情報を活用する研究例は少ない.その理由の一つには,分析結果が必ずしも学生や教員への提供に適した形式となっていない点(例:具体的対策の提示や,結果を数値として示すことの困難等)が挙げられる.
申請者は,FDの中でも特に教員の指導能力向上に注目し,学生集団および個人に対応した指導法提示を支援する枠組の構築を目指す.授業評価アンケートにおいて,評価点と当該科目における学生の成績が常に正の相関を示すとは限らない.また,基礎科目の習得が不十分な学生が応用科目の授業を受講しても,十分な学習効果や満足度を得ることはできない.本研究では学生の授業評価アンケートデータと評価対象科目における成績データを広く継続的に収集し,学生への適切な指導法提示への貢献が期待される,以下に示すような「満足度と習熟度に関する関連性」を表現する確率モデルを構築する.
○ 学生個人の授業評価(授業満足度)と実際の成績(習熟度)との関連
○ 学生個人の授業評価と,成績の年度や学期を跨いでの変化,およびそれらの関係性の変化
○ 教科間における授業評価と成績との関連(それらの類似性や傾向)