国立東京工業高等専門学校 シラバス 国立東京工業高等専門学校トップページへ戻る シラバス 閲覧戻る
教科目名
実用法律学
担 当 教 官 宮崎 英生
学年、学科等 4年 一般教育科(人文系) 通常講義
単位数 期間 必修 1 単位 前期 週2時間 (合計 30 時間)
授業の目標と概要
我々は、社会生活を営む上でさまざまな法律に囲まれている。法律を守って生活する限り、社会からとがめを受ける
ことはなく、また、なにかトラブルにあったとき、法律はその解決策を示してくれる。法律とはどのようなものか、
実際にどのように用いられるのか、についての正確な理解は、常識ある社会人として身につけておくべき基本的な教
養といえる。この授業は、法制度の仕組のなかで最も基本的な役割を果たしている憲法、民法および刑法について入
門的な解説を行うことにより(裏面に続く)
カリキュラムにおける位置づけ
法律は、日本語で書かれているので、日本語の読解力が不可欠であるが、現代国語だけでなく、古典の素養が求めら
れる場合もある。また、社会生活のルールであるから、政治及び経済の基礎知識はもちろん、倫理哲学思想も必要で
ある。工学倫理で取り扱う分野を法的に考察する場面もある。さらには、内外の歴史に関する知識、とくに明治以降
の近現代史の知識は、現行の法律制度を理解するうえで不可欠である。
授業の内容 時間
1 オリエンテーション 1
 身近な事例やニュースで取り上げられる事案をもとに、法律に関する導入的説明を行い、「実用法律学」
という科目の全体像を紹介する。法とは何か、道徳、慣習とはどこが違うか、など法の意義を明らかにす
る。
2 法の解釈 2
現行法律体系の仕組について説明する。法の解釈や判例の意義について基礎的解説を行う。
3 憲法(1) 2
 現行の日本国憲法の制定経過をたどりつつ、明治憲法との違いを考える。現行憲法の基本原理のうち、国
民主権(天皇の役割)、平和主義(9条)について説明する。
4 憲法(2) 2
 基本的人権に関し、精神的自由権(信教の自由、表現の自由など)について、経済的自由との対比を交え
つつ説明する。
5 憲法(3) 2
 基本的人権に関し、14条の平等権および13条の幸福追求権の内容ついて説明する。
6 憲法(4) 、民法(1) 2
 憲法保障、違憲審査制について説明する。民法の全体像と基本原則について説明する。
7 民法(2)
 売買契約の具体例をもとに、物権と債権の相違、法律行為の意義、契約自由の原則とその例外など、財産 2
法の基本的な仕組について説明する。
8 民法(3) 2
物権変動の内容(不動産登記の役割)、契約の種類など、財産法の基礎項目について説明する。
9 民法(4)
 不法行為と損害賠償について説明する。借金の際の保証にかかわる事項(保証人、担保物権)について説 2
明する。
10 刑法(1)
 刑法の意義と機能、刑罰の本質と種類、刑の執行について説明する。刑法の基本原則(法益保護主義、責 2
任主義、罪刑法定主義)をふまえて犯罪の一般的成立要件について説明する。

(続き)
教科目名
実用法律学
授業の内容 時間
11 刑法(2) 2
 故意犯と過失犯、既遂犯と未遂犯、正犯と共犯、違法性阻却事由と責任阻却事由など刑法総則上の諸問題
を説明する。
2
12 刑法(3)
現行法上どのような行為が罪とされているか、個人法益に対する罪を中心に説明する。
2
13 訴訟制度
 民事訴訟と刑事訴訟の異同について解説する。刑事訴訟法上の基本原則をふまえて、刑事手続の流れを説
明する。 2
14 刑事責任を問われない者、犯罪被害者と法
 少年が犯罪を行った場合の手続、罪を犯した精神障害者の処遇について説明する。さらに、犯罪被害者に 2
対する法的支援の仕組などについて説明する。
15 知的財産法、補充とまとめ
 知的財産法の保護対象と救済手段について概説する。今期の講義の補充とまとめを行う。
前期末試験 1
《続き・授業の目標と概要》
前記の基本的教養を習得し、法律文書を読解・解釈する力と法律問題について的確に分析・思考する力を養
うことを目標とする。法律を支えているのは、健全な社会常識であり、筋道の通った理屈であるから、本講
座は、社会生活を送る上で必要な「ものの見方・考え方」を学ぶうえで最適の科目である。
さらに、社会に対する洞察を深めるために、刑事法に関わる分野からいくつかの項目を取り上げて掘り下げ
た説明を加える。
将来、工業専門職に従事した折には、特別の法律知識を要することになるが、それらをただ断片的に覚えこ
もうとしても、実際に役立つことは少ない。それらは、多くの場合、民法や刑法の原則の上に成り立ってお
り、いわば応用問題であるから、直面した問題を法律的に筋道立てて考えるためには、まずもって基本的な
法律知識を正確に習得し、法律解釈の基礎をしっかりと理解することが肝要である。
《履修上の注意》
法律の初学者であることを考慮して、具体的なイメージがわくように事例を用いて解説するが、法律の議論
は、性質上、抽象的にならざるを得ないことも確かである。専門用語や必要な基礎知識を覚えることは当然
であるが、なぜそうなるのかという理念や根拠も大事にして学習すること。わからないところは気軽に質問
してほしい。
法律に関する判断は、感情に流されず、論理則・経験則に基づいて合理的に行うところに真価があるので、
その意味で客観的・科学的なものである。ただ、実証の世界で完結するものではなく、一定の価値判断を伴
う点に特色がある。この機会に、法律論を素材として、物事を概念的・抽象的に思考することの面白さを味
わっていただければ幸いである。
   
   
   
   
   
   
教科書
岩志和一郎編『新版 法学の基礎』成文堂、2010年。なお、第13回以降については教科書で扱っていないので、プリントを配布する。
補助教科書
参考文献については随時紹介する。
履修上の注意
上記
評価基準
講義で扱った法律知識を正確に習得していること、具体的な事案に対して、関連する法律を正しく適用して、適切な結論を得ることができること。
評価法
定期試験100%
学習・教育目標 東京高専
A-2,D-3
JABEE
(a)(b)(g)