やっと、私の主な研究テーマの紹介です。前置きは短めに、早速始めましょう(とは書いたものの、じつはこのページ、ちょっと「重い」です)。
下に二つの動画があります(自由に再生、早送りなどできると思います)。左側が、巧く学習できなかった方、右側が巧くいった方となっています。
この動画、説明を一切しなければ、実はそれほど難しくない問題のように思われるかもしれません。円柱型のロボット(Khepera といいます)が迷路の出口(ゴール:画面右下の、明るくなっている部分です)へ到達する行動を学習する問題なのですが、この設定を聞く限り、多くの方々は「それなら強化学習でイケルんでない?」と思われるハズです(実際、強化学習のみでいけるでしょうし、ちゃんとやれば? 失敗するような問題ではないと言って良いかもしれません)。
従来法を使って巧くいかなかった例 | 新しく提案した方法で巧くいった例 |
この動画には、時間的な”前”と”後”があります。この環境中に存在するロボットは、上の動画で見ることができる障害物配置での適切な行動を学習する以前、これとは全く異なる障害物配置の環境でも、”ちゃんと適切に”行動することが出来ていました。
そして、環境が突然変わった上に示す状況で、一般的な強化学習”のみ”の手法(左側の動画)では、環境変化へ巧く適応できず、新たな環境での学習が巧くいっていないことがわかります。
反面、強化学習とベイジアンネットを組み合わせた新しい手法(右側の動画)では、環境がこれまでと違うものであることを認識して、新しい環境へ適応するための処理が実施されたおかげで、ご覧の通りゴールへの経路を獲得しています。環境への適応ができる理由を一言で言えば、ロボットが自身の「経験」(知識と言い換えても良いでしょう)を活かして新しい環境へ適応しようとしているからです。
ちなみに、ロボットが過去に経験した環境についての情報は、全てBNの形で蓄積されています。そして、いくつかの環境に関する経験をうまいこと「組み合わせる」ことで、これまでにロボットが経験したことのない未知なる環境への適応の可能性も広がっていきます。
なんだかんだと言いながら結局長文になってしまいましたが・・・手短に言うと(?)私の主な研究テーマは上述の通りです。主なテーマと書いてあるとおり、個人的には上のテーマをメインに研究をしているものの、他大学の先生や学生さんと共同で研究をしているテーマや、過去に取り組んでいて、現在はやっていないものの引き続き興味を持ち続けているテーマもあります。 それらのうちいくつか代表的なものについて、以下にリストアップしました(現在進行形のものから順番に並んでいます)。皆さんの中で興味を持つ内容のテーマがあって、もしやってみたいと思うのなら、是非一度相談に来てみて下さい。
これまで取り組んできたテーマを10個弱並べてみましたが、下半分は既にかなり昔のものなので、そっくりそのまま研究を継続したところで大きな成果は得られない(もしくは、誰かがどこかで既に得ている)でしょう。ただ、上を見てもらえれば、私がどのようなことに興味を持っている人間であるかは理解してもらえるかもしれません。
基本的に、広く機械学習に関する興味は持ち続けていますので、機械学習に関する質問は(私の答えられる範囲で)広く受け付けますし、面白い話があれば是非情報提供してもらいたいところでもあります。この長文を読んで少しでも興味を持った皆さんは、どうぞ気軽に研究室まで訪れてください(不在時、論文執筆その他で忙しい時、ノックも挨拶もしないでいきなり要件だけを伝えるような人が入ってきた時(いる?)以外は歓迎します)。
さて、ここまでのテキストや画像などなどを見てもらって、機械学習の分野に興味をもった皆さんへ向けて、機械学習の分野で研究を進めていくために必要だと思われる能力や素養(ふだんからの心がけで身につけた知識や教養)について挙げていきたいと思います。ちなみに、順番と重要度の関連性はありません。どれも重要だと思うからです。
はっきり言って、機械学習に興味がある学生のみならず、本校の学生であれば全員に必要なものであるとも言えそうなポイントですが、まぁ、説明していきましょう。
数学の知識は必須です。強化学習をツールとしてだけでなく理論としてしっかり掴むためには、微分や差分の知識、数列、級数の活用が必要ですし、行動選択が決定論的でない場合には確率の考え方も重要になってきます。ベイジアンネットはまさにネットワークそのものが確率分布となっていますから、確率・統計の理論をおさえておかなければ、とても「研究する人」として触ることはできないでしょう(一利用者として使う分には問題ないでしょうけれどね)。
その他、機械学習に関する全ての分野に関する勉強をしっかりしたいと考えるのであれば、全てが完璧でアレとはいわないまでも、最低限高専本科卒業程度の数学的知識の少なからぬ部分を理解できていることが最低条件となるでしょう。
続いては英語力。皆さん英語は得意ですか?もしくは好きですか?私は大好きです(得意かと言われればどうでしょう?でも、「普通に」会話をしたり発表をしたりはもちろんできます)。そもそもいろいろな(国の)人と話すことが好きな性格なので、中学校時代から抵抗なく英語を勉強することができました。
読み書きだけではなく、聞いて話せなければいけないということは理解できると思うのですが、最後の「会話できること」とはどういう意味か分かりますか?相手の英語が理解できて、相手に分かる英語が話せる”だけ”では会話は成り立ちません。話は少々脱線しますが、これは日本語その他の言語でも、メールやプレゼンテーション等、文章での情報交換においても言えることですね。
相手の言ったこと(書いたこと)の要点を正しく捉える、自分の言いたいことを分かりやすくまとめて伝える、状況に応じて表現を適切に変えられる、相手や場面に応じて聞く態度、話す態度を臨機応変に変更できる、等など、コミュニケーションに関して学ぶべきことはたくさんあります。
最近、KY(空気読めない or 読まない?)なんていう言葉もちらほら見られますが、話す相手の意図も、自分が何を話したいのかさえもはっきりと理解できないような人では、とても”場”の空気を読むことはできないでしょう、きっと。
コミュニケーション能力を鍛えるには、まず、ちゃんとした人(先生?先輩?友人?場合によっては後輩?)の近くにいて、その人の発言や受け答え、態度を良く観察することが近道だと思います。そして場数を踏むために、自分でも実際にそれを実践してみることです。
最初のうちは失敗することもあるでしょうが、その時は、自分が失敗した原因をしっかりと把握して、次に活かせばいいのです。重要な面接や発表会などで取り返しのつかない失敗をする前に、どうでもいい場面(!?)でたくさん失敗をして、たくさん人から注意されるべきだと、私は思います。失敗したら、もちろん反省することが重要ですが、必要以上にヘコんではいけません。ヘコむと通常、再び前へ進むための推進力が減衰しますから。
うーむ。なんだかまたもや長文となってきました。私が話し好き(書き好き?)ということがこれで分かってもらえたでしょうか(^^; (これらの内容を伝えるのにこれだけの分量を割いているのですから、私もまだまだ修行が足りませんね。A4表裏くらいにまとめられるようにならねば)
あと三つほど伝えたいメッセージがありますが、そろそろ時間も押し迫ってまいりましたので、一旦終了したいと思います。今度また時間ができたときに、残りの三つについても追加しておきたいと思います。
・・・とはいえ、次にいつ更新するのかは予告できませんので、どうにも気になるという人はやっぱり、直接私のところまで質問に来るか、メールして下さい。
みっつまとめて一言で言えば、
「基本なくして応用なし。常識を踏まえた上で、問題領域を含むはるか大きな、
広い視点から物事を眺める癖をつけましょう!」
ということです。一言になっていませんが、許して下さい。 おあとがよろしい(?)ようで。
P.S. 大した推敲もせずにイキオイで書いた文章ですので、誤植等を発見した人は知らせてもらえるとありがたいです。